3.飼養管理-哺育期・育成期の飼養管理
(2)育成期の管理
ポイント
体重増加発育旺盛期、中後半は反芻胃も発達成長に合わせて濃厚飼料、粗飼料を給与
哺育・育成期の発育のよい牛(体高、体重)は枝肉重量も大きい
離乳、群飼開始時の留意点
ストレスを最小限とするため、飼料の切り替えは段階的に、群分けは月齢、性別を合わせ少頭数にして争いが起きないようにします
離乳、群飼開始は、栄養源、環境の変化が起こりストレスも最大です。
群分けは月齢、体格、雌雄を合わせてできるだけ小頭数(3頭程度)で行い、なるべくその後の群間の移動は避けます。
人工乳から育成用配合飼料に切り替えは2週間程度かけて段階的に行います。
飼槽の構造やミネラル(鉱塩)、自由給水にも注意します。
育成牛への飼料給与
肥育素牛では、前半は濃厚飼料、中後半は粗飼料中心で、しっかりした骨格づくり
肋張りのよい肥育に対応できる反芻胃づくりをします
繁殖用に育成する場合も同様に過肥に気をつけます
体高、腰角幅等は肥育期の発育と関係があると言われています。
第一胃の発達時期で粗飼料は第一胃を大きく丈夫にします。
濃厚飼料多給による過肥は、第一胃の発達が不十分で肥育後期の増体が伸びず、体脂肪、皮下脂肪も蓄積し、飼い直しが必要となります。
市場出荷前の7、8㎏もの配合飼料給与は避けましょう。

発育と胃の発達(寺田ら1970)を参考に作図
【参考】各地域の哺育、育成時の飼料給与の目安の指導(農家向け普及資料から)

人工乳、育成用配合飼料の配合、
栄養価はそれぞれの地域で利用されている商品による
哺育・育成期の飼料設計の基本
子牛への配合飼料給与のイメージ図

子牛への粗飼料給与のイメージ図

原図:(独)家畜改良センター
哺乳期の栄養管理の基本は、良質なミルクをしっかり飲ませること。親付き飼養の場合は母牛の栄養状態がミルクの質・量に関与するため、母牛の栄養管理が重要。また、スターター摂取量は常に意識し、摂取量を徐々に増やしてルーメン粘膜の絨毛を発達させる。スターターの摂取量は離乳時の発育に影響を与えるので重要。
一方、粗飼料はこの時期はあまり重視せず、遊び食いぐらいをイメージ。多量に食べるとかえって食滞や消化不良の原因になる場合もある。虚弱や病気等でスターターの食い込みが遅い子牛は、場合によっては哺乳を延長。定期的に発育などを確認し、標準的な発育をできるだけ下回らないように心がる。
育成期では、4-6ヵ月齢はまだ粗飼料より配合飼料の摂取量の方が多い。この時期は骨格や筋肉の発達時期のため、蛋白質が重要となり、配合飼料は雌3.5-4㎏程度、去勢は4-4.5kgが目安。
6ヵ月齢からは配合飼料を一定にして、粗飼料を多給していくイメージ。この時期は腹腔内脂肪や筋間脂肪が付きやすい時期といわれているため、デンプン含量が多い配合飼料は一定でややセーブする。また、この時期からルーメンのサイズが大きくなるといわれているため、粗飼料の摂取量を増やす。
良質の粗飼料とは
革のステージ別飼料成分変動パターン
資料は静岡県立農林環境専門職大学
短期大学部渡邉先生提供
良い粗飼料は家畜の生産性が高くなる飼料
親牛では嗜好性がある程度あり栄養価があまり高くない粗飼料、子牛・育成牛では嗜好性が良く栄養価が高い粗飼料がこれにあたる
子牛育成期の濃厚飼料多給時期と粗飼料摂取量、発育との関係
長崎県の成果情報(令和元年)から
長崎県農林技術開発センター・畜産研究部門・大家畜研究室
■ 成果情報名
黒毛和種子牛育成期の濃厚飼料多給時期が粗飼料摂取量と発育に及ぼす効果
【要約】
黒毛和種において、離乳後の子牛育成前期(90~179日齢)に濃厚飼料を多給し後期(180~269日齢)に制限すると、全育成期間を通じた養分摂取量は慣行給与と同等で、後期の粗飼料摂取量は増加する。育成機関中の日増体重は大きく、後期の胸腹差は拡大していく傾向にある。
【具体的なデータ】
表1 給与方法
1)供試牛は各区黒毛和種去勢牛6頭(1代祖気高系4頭、但馬系2頭)を単房で飼養し、平成31年4月~令和元年11月まで実施。
2)濃厚飼料:90~119日齢にかけてほ乳期用飼料(TDN77%、CP20%)、105日齢以降育成用飼料(TDN77%、CP16%)を給与(105日齢から119日齢にかけて切替)
乾草:自家産イタリアンライグラス
3)県内各地域暦を参考に設定
4)前半(90~179日齢)の濃厚飼料は、目安量を基本として採食状況により漸増。後半(180~269日齢)の乾草は、目安量を基本として自由採食。
表2 各育成期間における1頭あたりの養分摂取量
同項目異符号間に有意差あり(P<0.05 t検定) ns:有意差なし
1)濃厚飼料は成分表示値、粗飼料は日本標準飼料成分表(2009年版)表示値から養分摂取量を計算し、各区6頭の平均値
2)日増体重1.0kgに必要な養分要求量に対する充足率(日本飼養標準 肉用牛2009年版)
表3 育成後期の1日当たり粗飼料摂取量
同項目異符号間に有意差あり(P<0.05 t検定) ns:有意差なし
表4 育成終了時における体重・日増体量・体系の比較および胸腹差の推移
同項目異符号間に有意差あり(P<0.05 t検定) ns:有意差なし
1)育成期間中の増体量を日数で除した値
子牛の発育が肥育成績の及ぼす影響
平成23年度大分県家畜保健衛生並びに畜産関係業績発表(東部局 繁田ら)から抜粋
【材料及び方法】
2005年より後継者グループ出荷牛を中心に子牛市場出荷時における胸囲、体高、体重の測定を実施。総調査頭数1,493頭のうち肥育成績のマッチングが可能な去勢牛299頭を対象に出荷体型と肥育成績の因果関係を分析した。
比較内容
| 日齢体重 | 0.95未満~1.1以上の区間を0.05間隔で5区分に分け、出荷体重と肥育成績の分析を実施 |
| 出荷体高 | σ0未満~2.0以上の区間を1.0間隔で4区分に分け、出荷体高と肥育成績の分析を実施 |
【分析結果】
日齢体重について
枝肉重量、ロース芯面積においては日齢体重が良好であるほど良好。BMS、バラ厚、皮下脂肪厚については特に関係がない。子牛市場販売価格は上位区分と下位区分では140,000円もの開きがあったが、それを補える出荷時の枝肉重量格差があり、日齢体重が良好な子牛は市場価格も上位にあるが、枝肉重量が安定している為に肥育農家としてはメリットがあると推測できる。
出荷体高について
皮下脂肪厚を除く全ての項目で体高(σ)上位区分の肥育成績が良好。牛市場販売価格は上位区分と下位区分では120,000円もの開きがあったが、それを補える枝肉成績となり、体高が良好な子牛は市場価格も上位にあるが、枝肉重量、BMSが安定している為に肥育農家としてはメリットがあると推測できる。
また子牛市場出荷時の体高の大きい方が肥育終了時の脂肪交雑が良い傾向にあった。以上のことから子牛市場出荷時の子牛の発育バランスが肥育成績に影響してることがが示唆された。
【考察】
出荷時の日齢体重、体高から肥育成績を分析した結果、体重、体高のバランスが取れている子牛が肥育成績が安定しているという結果であった。
特に肥育成績の上位の牛(表4、表5)については体高、日齢体重共に良好な子牛に集中していた。
繁殖農家の子牛生産時に最も重要な事は、しっかりとした骨格形成が行われた結果として増体の確保に繋がったということであろうと推測される。
また今回の調査分析により、肥育成績向上の為には出荷時の体高が大きく関わる要素であることが推測される。
表4 BMS No5以上の出荷体重

表5 枝肉重量480kg以上の出荷体重

除角、去勢の実施
除角をする場合は生後2か月以内、去勢は3か月以内での実施が推奨されており、それ以外の場合も含め麻酔や鎮痛措置が推奨されています
国の指針で、除角は角が未発達な時期(生後2か月以内)に実施し、それ以降は常に麻酔薬等を使用する。
去勢は生後3か月以内に実施するとされ、それ以降は必要と判断された場合は麻酔薬等を使用するとされています。
早期の去勢は生産性にプラスになり、除角の場合も鎮静、麻酔、鎮痛措置はその後の増体がよいなど生産性にプラスになることがわかっています。
具体的な実施例は(一社)全国肉用牛振興基金協会のホームページで。
■ 子牛市場出荷前の準備
- ワクチン接種など家畜市場のルールを確認
- 2か月前から繋ぎ運動、牛体の手入れ
- 1か月前には削蹄
- 出荷2日前から配合飼料は控える
- 出荷車両の消毒
去勢施術時期の肥育枝肉成績への影響
「家畜診療」67巻12号(2020年12月)
NOSAI宮崎佐藤ら から
■ 黒毛和種子牛育成期の去勢施術時期と病傷罹患が肥育枝肉成績に及ぼす影響
【要約】
黒毛和種子牛の育成期における去勢日齢および病傷罹患と最終的な肥育枝肉成績との関連を調査した。去勢施術日齢は93-234日であり、125日齢以下(n=73)では126-150日齢(n=166)に比べてロース芯面積,バラ厚,BMS -No,枝肉歩留が高い傾向(p<0.1)がみられた。また、前胃発達遅延群(n=8)と開腹手術群(n=16)では県内枝肉平均に比べてロース芯面積,バラ厚,BMS -No,枝肉重量ほか多くの項目で有意(p<0.01)な低値を示し,BRDC群(n=10)では枝肉重量が有意(p<0.01)に重かった。
図1 去勢施術日齢ごとの枝肉成績(部分)
≦125日齢(n=73)、126-150日齢(n=166)、
151-180日齢(n=131)、181日齢≦(n=29)イコール
平均±標準偏差,a-b:p<0.1
去勢時の鎮痛措置による生産性の向上
NOSAIかごしま 加藤ら 令和4年度家畜診療等技術九州地区発表会発表資料から
■ 黒毛和種子牛における観血去勢時の疼痛ストレス軽減対策
観血去勢時に疼痛緩和対策を実施し、効果を検証
【供試牛】
管内1農場で2020年8月~12月までに観血去勢を実施した黒毛和種子牛21頭(平均日180±3.8日)
【去勢方法】
キシラジン(0.2mg/kg)鎮静後、四肢保定し、定法どおり観血去勢し、ナイロン糸にて精索結紮し、精巣切除。
PCG投与後、アチパメゾールにて覚醒。
【群分け】
- 対照群(n=7):無処置
- リドカイン群(n=7):鎮静後、去勢5~10分前に2%リドカイン(3.5ml/100kg)を各精巣実内質注射
- メロキシカム群(n=7):鎮静前に、2%メロキシカム(0.5mg/kg)s.c.
観血去勢時のメロキシカム投与は、経済的、アニマルウェルフェアの観点からも有用
結果(糞便コルチゾル値)
費用対効果
まとめ・考察