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(公社)畜産技術協会で発行する「畜産技術」で有機畜産が特集されています

特集 有機畜産

  • 行政の有機畜産に対する取り組み
    -施策の展開の方向性 真壁 七恵
  • 有機畜産と環境問題:有機は環境にやさしいのか 堤 道生
  • 有機畜産を支える草地飼料作関連技術の開発動向と展開 菅野 勉
  • インタビューレポート
    ①駒谷牧場 ②小林農園・テンアール株式会社 米内 美晴 寺田 文典

農林水産省畜産局の真壁専門官は、有機畜産は、化学肥料の使用などの飼養管理の制限や有機畜産物を扱う加工施設の確保の関係で、多くの農家が大規模に取り組むことは難しい面はあるが、自然循環機能を増進し、環境への負荷を低減する取り組みであることから、関係者の協力を得ながら丁寧に推進し、消費者に対してもその取組にはコスト負担、価格転嫁が必要なことを丁寧に伝えていくとしています。


農研機構西日本農業研究センターの堤上級研究員は、我が国の慣行肉用牛生産では、輸入濃厚飼料が多給され、GHGの排出量の1/4は飼料輸送によるものであるが、各国との比較では、肉用牛生産技術が高く、エネルギー消費量は突出しているものの、GHGの排出量は平均的。また、濃厚飼料多給では、増体量の向上と肥育期間の短縮、消化吸収の良い飼料の摂取と乾物摂取量の減少で消化管発酵によるメタン発生量と排泄物から発生する一酸化二窒素(N20)も少なくなるため、粗飼料多給の方がGHG排出量、エネルギー消費量とも値が高い傾向。自給牧草のみで繁殖肥育一貫生産を行っている北里大学八雲牧場で行った研究では、慣行生産システムとの比較で、飼料輸送の有無もあり、土壌の酸性化、富栄養化、エネルギー消費量の値は下回ったが、GHG排出量は肥育日数が長く削減されなかった。有機畜産導入前後の比較では化学肥料の施用中止もありGHG排出量、エネルギー消費量が削減された。有機畜産による環境負荷軽減には生産効率を向上させる努力が必要だが、資源消費は大きく削減可能と考えられることから、有機畜産の重要性は今後高まっていくであろうとしています。


そのほか、農研機構畜産研究部門の菅野飼料連携調整役は、有機飼料を生産するための雑草防除技術や肥培管理、病害虫防除技術を紹介。また、インタビューレポートでは、放牧による有機肉用牛生産として、アンガス種の繁殖肥育一貫経営に取り組んでいる北海道の駒谷牧場(表紙写真)を紹介しています。